【画像あり】 横内 正 2026年最新メディア #975
85歳の挑戦、初代・格さんが語る「時代劇の未来」——名優・横内正が今、舞台にかける執念とグローバル時代への警鐘
横内 正という名を聞いて、昭和から平成にかけてのお茶の間を沸かせた国民的時代劇『水戸黄門』の初代・渥美格之進(格さん)を思い浮かべない者はいないだろう。重厚感あふれる声、そして端正な佇まいで日本のテレビ史を彩ってきた名優が、2026年の今、再び演劇界の最前線で異彩を放っている。御年85歳を迎えた彼が挑むのは、古典の再解釈と若手育成を掛け合わせた新たな舞台プロジェクトだ。
単なるノスタルジーに浸る復帰劇ではない。現代の演劇界が直面する後継者不足やデジタル化の波に対し、横内 正は自らの身体を通して一つの「答え」を示そうとしている。彼が立ち上げた劇団の稽古場には、かつてのテレビ黄金期を知るベテランの厳しい眼差しと、それに応えようとする若き役者たちの熱気が満ちていた。
「格さん」から半世紀、今も衰えぬ表現への渇望
1969年の放送開始から、お茶の間の定番となった『水戸黄門』。東野英治郎演じる黄門様の脇を固めた初代・格さん役は、彼のキャリアにおいて決定的なマイルストーンとなった。しかし、彼はその栄光に甘んじることはなかった。シェイクスピア劇から現代劇まで、常に自身の表現領域を拡張し続けてきた軌跡がある。今回の新作舞台でも、単に主役を張るだけでなく、演出家としての鋭い感性を遺憾なく発揮している。
「過去の遺産で食いつなぐような真似はしたくない」。稽古の合間に見せた厳しい表情が、彼の本気度を物語る。年齢を重ねるごとに削ぎ落とされ、研ぎ澄まされていくその演技力は、観る者を一瞬で劇世界へと引き込む引力を持っている。
世界が注目する「JIDAIGEKI」と日本の現状への危機感
近年、海外の配信プラットフォームを中心に日本の時代劇(Jidaigeki)がかつてない注目を浴びている。ハリウッド主導の作品が世界的な評価を得る一方で、本家であるはずの日本のテレビ業界では時代劇の制作本数が激減しているのが現状だ。この歪んだ構図に、彼は強い危機感を抱いているという。
「形だけを真似た時代劇は、いずれ淘汰される」。そう語る彼の言葉には重みがある。かつて京都の撮影所で培われた、刀の振り方一つ、着物の着こなし一つに宿る「リアリティ」と「美学」。それらが今、急速に失われつつあることへの焦燥感が、彼を突き動かす原動力になっているのだ。
85歳にしてなお現役、過酷な稽古場で見せる「プロの背中」
若手俳優たちが息を切らすような激しい稽古場において、彼の存在感は圧倒的だ。セリフの第一声で空気の密度が変わる。長年の舞台経験で培われた発声法と呼吸は、マイクを通さずとも劇場の隅々まで響き渡る。体力の衰えを言い訳にせず、誰よりも早く現場に入り、台本と向き合う姿勢は、共演する若手たちにとって何よりの教科書となっている。
「横内さんの前に立つと、自分の甘えがすべて見透かされているような気がする」。そう語るのは、今回主役に抜擢された若手俳優だ。妥協を許さない指導は時に厳しいが、そこには次世代を育てるという深い愛情が満ちている。
デジタル時代だからこそ響く、生身の「声」の力
AIやCGがエンターテインメントの主流となりつつある2026年。あらゆる表現がデジタル処理され、最適化される時代だからこそ、彼は「生身の人間が発する声とエネルギー」の価値を信じている。劇場の暗闇の中で、観客と役者が同じ空気を共有し、感情をぶつけ合う。その一回性の芸術こそが、演劇の真髄であると彼は説く。
彼の代名詞でもある、あの低く響く美声は健在だ。言葉の端々に宿る感情の機微は、どれだけテクノロジーが進化しようとも再現できない、人間固有の領域であることを証明している。
次世代へ繋ぐバトン、横内正が描く最後の「花道」
今回のプロジェクトは、彼にとって一つの集大成であり、同時に未来への種まきでもある。自分が先輩たちから受け継いできた演劇の魂を、いかにして次の世代へ手渡すか。その問いに対する答えが、この舞台に凝縮されている。
幕が上がるその瞬間まで、彼の挑戦は終わらない。日本の演劇界に偉大な足跡を残し続けるレジェンドが、2026年の今、私たちに見せてくれるのは、老いを超える情熱の可能性そのものである。 (出典: 横内 正(Yahoo!ニュース))